医学部 医学科 皮膚科学講座
准教授
イトウ タイスケ
伊藤 泰介

更新日: 2024/12/17
教員基本情報
プロフィール
私の研究のテーマは、皮膚免疫、とくに自己免疫、毛包免疫やアトピー性皮膚炎、また乾癬の基礎研究、臨床研究である。2002年から2年間、毛包免疫研究の第一人者であるラルフパウス教授(現 Miami Univ. USA)の研究室(2002.2-2004.1 Hamburg Univ.)に留学し毛包免疫について研究をさらに深めた。留学中は毛包周囲の免疫寛容やストレスホルモンについて検討し、毛包がMHC class I発現の減弱などを主とするimmune privilege領域といわれる免疫寛容組織であり、その破綻が円形脱毛症などの自己免疫性脱毛を誘導することを解析し論文発表し(Ito et al. Am J Pathol 2004)、この論文は広く引用され円形脱毛症の基本的概念として広まることとなった。帰国後は脱毛症外来を再開し、研究でえたことを地域医療に還元するよう心がけている。その一つとして、円形脱毛症の発症には形質細胞様樹状細胞が深く関与していることを検討発表した(Ito et al. Allergol Int 2019)。これによりウイルス感染症が円形脱毛症のきっかけになることが理解でき、患者に対して日常生活指導の根拠となりえるものと感じている。今後の新しい治療薬開発に向けてCCR5阻害などを検討し、C3H/HeJマウスに対してTh1/Tc1の走化性阻害を目的として、抗CCR5抗体によってモデルマウスの脱毛症状が改善するという結果を発表している(J Cutan Allergy Immunol 2019)。またこうした基礎研究がもととなって、IFN-γ阻害などを目的としてJAK1、JAK3阻害薬が考えられ、すでに浜松医大を含む国内数施設と国外の施設の国際共同治験が遂行され、2022、2023年と適用拡大、新薬として上梓された。また影山助教を指導し、アトピー性皮膚炎を合併した円形脱毛症の病態におけるサイトカインバランス解析を行ない、Int J Mol Sciに掲載された。この結果は患者の治療選択において考慮すべき病態を示している。日本でもっとも円形脱毛症に対してJAK阻害薬を積極的に使用している施設であり、各製薬会社などとも共同研究、アドバイザリー契約を結び、基礎研究、創薬に貢献できるよう意識している。 今後は、難治化している円形脱毛症の病態解明や、新たな治療ターゲットの模索を試みていく。
その他の所属・職名
[1]. 医学部附属病院 皮膚科 副科長
経歴
1995年5月- 浜松医科大学 医学部附属病院 研修医
1996年6月- 1997年8月31日 静岡県立総合病院 皮膚科 研修医
1997年9月1日- 2006年3月31日 浜松医科大学 皮膚科学 助手
2002年1月31日- 2004年1月31日 ハンブルク大学エッペンドルフ病院皮膚科留学(~2004) 皮膚科学 客員研究員
2006年4月1日- 2018年3月31日 浜松医科大学 附属病院皮膚科 講師
2019年4月1日- 浜松医科大学 附属病院皮膚科 准教授
学歴
1995年3月31日 卒業 産業医科大学 医学部
学位
医学博士 (皮膚科学) 浜松医科大学
研究分野
ライフサイエンス - 皮膚科学
研究キーワード
皮膚免疫
毛髪疾患
爪真菌症
研究テーマ
[1]. 円形脱毛症の病態解明
[2]. 皮膚アレルギー
[3]. 爪白癬症治療の臨床研究
共同・受託研究希望テーマ
[1]. 円形脱毛症モデル樹立についての検討
[2]. 円形脱毛症の新規治療開発 免疫修飾関連 円形脱毛症(AA)の治療薬候補品の有効性を評価できる実験系を構築する。
[3]. 円形脱毛症の新規治療開発
競争的資金等の研究課題
[1]. 2020年- 2022年 NKG2D、NKG2D ligand発現制御による円形脱毛症の新規治療の開発
[2]. 2019年- 2019年 皮膚疾患画像ナショナルデータベースの構築とAI活用診療支援システムの開発 2019年分
[3]. 2019年- 2020年 抗NKG2D抗体を用いた円形脱毛症に対する新規治療法の開発
[4]. 2018年- 2019年 皮膚疾患画像ナショナルデータベースの構築とAI活用診療支援システムの開発 2018年
[5]. 2017年- 2019年 毛包の免疫寛容とその破綻における免疫チェックポイントPD-1/PD-L1の関わり
[6]. 2014年- 2014年 女性における男性型脱毛症に対するエストラジオール含有育毛剤の使用感調査
[7]. 2014年- 2016年 円形脱毛症に対するpDCを中心とした新たな病態メカニズムの解明
[8]. 2013年- 2013年 皮膚樹状細胞のケモタキシスに関する研究
[9]. 2011年- 2013年 円形脱毛症に対するケモカイン、ケモカイン受容体阻害を介する新規治療戦略
[10]. 2006年- 2006年 円形脱毛症発症におけるケモカイン、ケモカイン受容体の関わり
[11]. 2005年- 2007年 成長期毛包における免疫特殊環境と円形脱毛症の病態の解明
研究活動
論文
[1]. Clinical Characteristics of Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome and Long-Term Real-World Efficacy and Tolerability of Canakinumab in Japan: Results of a Nationwide Survey.
Arthritis & rheumatology (Hoboken, N.J.) (2024年) [査読] 有 [DOI]
[2]. 外的要因と抜け毛 新型コロナウイルス感染症も含めて
皮膚と美容 (公社)日本毛髪科学協会 [巻]55 [号]4 [頁]132 -132-138 (2023年) [査読] 有
[3]. Hair Loss Profiles and Ritlecitinib Efficacy in Patients with Alopecia Areata: Post Hoc Analysis of the ALLEGRO Phase 2b/3 Study.
Dermatology and therapy [巻]13 [号]11 [頁]2621 -2634 (2023年) [査読] 有 [DOI]
[4]. Efficacy in Subgroups related to Disease Characteristics in Patients with Alopecia Areata from BRAVE-AA1 and BRAVE-AA2
JOURNAL OF THE AMERICAN ACADEMY OF DERMATOLOGY [巻]89 [号]3 [頁]AB42 -AB42 (2023年) [査読] 有
[5]. 日本皮膚科学会マニュアル 安全使用マニュアル リトレシチニブトシル酸塩(販売名:リットフーロカプセル50mg) 円形脱毛症
日本皮膚科学会 [巻]133 [号]10 [頁]2313 -2323 (2023年) [査読] 有 [DOI]
著書
[1]. 2024年4月15日 世界一やさしい皮膚科の教科書 南江堂
[2]. 2024年4月15日 世界一やさしい皮膚科の教科書 南江堂
[3]. 2024年3月3日 皮膚疾患 初期対応ノート 日本医事新報社
[4]. 2024年2月29日 日常診療に生かす診療ガイドライン2024-2025
[5]. 2024年1月 皮膚疾患最新の治療2023-2024
研究発表
[1]. 2023年12月12日 JAK-STAT阻害からみたAD治療 炎症性皮膚疾患インターネットライブセミナー
[2]. 2023年11月18日 円形脱毛症・休止期脱毛の診断と治療の技 第87回日本皮膚科学会東京支部学術大会
[3]. 2023年11月11日 リットフーロの臨床効果~ALLEGRO-2b/3より~ リットフーロⓇカプセル50mg新発売記念講演会
[4]. 2023年11月9日 AA/ADにおける治療戦略を考える〜JAK阻害薬の使用経験を踏まえて〜 Lilly Olumiant Web Seminar
[5]. 2023年11月2日 円形脱毛症の新しい選択肢 リトレシチニブへの期待 リットフーロWeb講演会 from KINKI・CHUBU
受賞
[1]. 2020年12月22日 日本皮膚免疫アレルギー学会 最優秀論文賞
[2]. 2019年11月30日 第49回 日本皮膚免疫アレルギー学会 ポスター賞 銅賞
[3]. 2019年4月21日 第3回 マルホ・高木皮膚科振興財団 高木賞
[4]. 2016年7月13日 Asia-Pacific Combined Dermatology Research Conference 2016 ASDR/JSID Collegiality Award
[5]. 2015年8月7日 European Society for Dermatological Research, National Alopecia Areata Foundation Travel Fellowship
所属学協会
[1]. 2021年11月5日- 日本臨床毛髪学会
[2]. 2020年6月21日- 日本免疫学会
[3]. 2005年7月8日- 日本小児皮膚科学会
[4]. 日本皮膚科学会
[5]. 日本研究皮膚科学会
委員歴
[1]. 2021年11月5日- 日本臨床毛髪学会 評議員
[2]. 2019年7月19日- 日本小児皮膚科学会 運営委員
[3]. 2019年- 日本皮膚科心身医学会 評議員
[4]. 2019年- 日本美容皮膚科学会 評議員
[5]. 2019年- 日本毛髪科学協会 理事
教育活動
担当授業科目
[1]. 皮膚科学
[2]. 臨床栄養学
教科書・教材
[1]. 2021年4月 メディックメディア 試験予想問題
[2]. 2020年4月15日 メディックメディア 試験予想問題
社会貢献
社会貢献活動
[1]. 2022年11月20日- 2022年11月20日 円形脱毛症の患者会
[2]. 2022年5月27日- 2022年5月27日 紫外線予防講座
[3]. 2021年5月28日- 2021年5月28日 紫外線予防講座
[4]. 2019年9月14日- 2019年9月14日 しっておきたい皮膚のこと アトピー性皮膚炎・脱毛症
[5]. 2019年5月28日- 2019年5月28日 雄踏幼稚園 紫外線講座